健康情報の信頼性を見分けるには  by T.Saito 5/21/02

文春新書:「食べ物とガン予防」健康情報をどう読むか 坪野孝義
  TV番組・新聞報道に惑わされないために

 がん・栄養・環境リスクに関する最新の研究を紹介するウエッブサイトで有名な坪野吉孝先生が一般向けに新書を出されました。
 「ココアは健康に良い、バナナはガン予防になる。」といった科学的な価値のはっきりしない話しが大きく報道される反面、重要で面白い研究が見逃されている。そのギャップに戸惑いを感じている著者が、ふだん研究者が意識せずに行なっている思考プロセス(EBM)を6段階のフローチャートにして、氾濫する健康情報の信頼性を簡単に評価する方法を書いたものです。

ステップ1 具体的な研究にもとづいているか いいえ それ以上考慮しない(終わり
↓はい
ステップ2 研究対象はヒトか
動物実験や
試験管培養
「有害作用」についての研究は、
それなりに注意を払う。
「利益」についての研究は、
人間に当てはまるとは限らないので、
話半分に聞いておく(終わり
↓ヒト
ステップ3 学会発表か、論文報告か 学会発表
科学的評価の対象として不純なので、
話し半分に聞いておく(終わり
↓論文報告
ステップ4 定評のある医学専門誌に掲載された論文か いいえ
暇な時に参照する(終わり
↓はい
ステップ5 研究デザインは
「無作為割り付け臨床試験」や
「前向きコホート研究」か
いいえ
重視しない(終わり
↓はい
ステップ6 複数の研究で支持されているか いいえ
判断を保留して待つ(終わり
↓はい
結果をとりあえず受け入れる。ただし、将来結果がくつがえされる可能性を頭に入れておく。

 最近、日経新聞に出た歯科関係の2つの記事は、いい教材になりそうです。上記の6つフローチャートで評価してみて下さい。


事例1

掲載日:2002/05/08
水道水へのフッ素添加の危険性、市民団体が指摘」

 虫歯予防のために水道水へのフッ素添加を検討する自治体がある中市民団体「薬害オンブズパースン会議」(鈴木利広代表)は、「歯の美容を損ねるだけでなく、がんの原因になる可能性もある」などと危険性を警告する意見書をまとめた
近く厚生労働省のほか、添加を検討している自治体などに送付する。国内の水質基準では水道中のフッ素濃度の上限は一リットル当たり0.8ミリグラムだが現在、ほとんどの自治体では0.08ミリグラム以下。意見書では、虫歯予防のために基準の上限までフッ素を添加すると、「美容上問題になる程度の斑状歯を持つ子が出現する可能性がある」と指摘している。

<チェック結果>
具体的な研究が示されていないのでステップ1で終わり

<解説>
point1: がんの原因になる可能性もある
 根拠となるデータや論文が提示されてない。通常の利用法での発ガン性は、一流学会誌に掲載された複数の研究が関連性を否定している。

point2: 意見書をまとめた。 意見書では、
どんな意見をもつのも自由である。記事には意見の根拠となるデータや研究論文が示されてない。政治的な意図に基づく意見か科学的な根拠に基づいた意見なのか判定できない。


事例2

掲載日:2002/03/08
 
「花王、虫歯を抑える歯磨き剤開発」

 花王は8日、歯のミネラル流出によって起きる初期虫歯を効果的に抑え、深刻な虫歯になるのを防ぐ歯磨き剤を開発したと発表した。4月に発売し、現在約2割のシェア拡大を目指す。初期虫歯はカルシウムやリンなどのミネラルが流出して歯の中に小さな空洞ができる現象。普通に食事をしていて起きるが、だ液中のミネラルが歯に取り込まれれば自然に健康な状態に回復する。この回復力が低下すると歯に穴が開き虫歯になる。新歯磨き剤には2種類のフッ素化合物が含まれている。その作用で、ミネラルと虫歯予防効果のあるフッ素の取り込みが促され、初期虫歯を改善する。ミネラルとフッ素の吸収量が従来の歯磨き剤より倍増することを実験で確認した成果を9日に米サンディエゴで開かれる国際歯科研究学会で発表する2種類のフッ素化合物は歯磨きチューブの中で混ざり合うと効果が薄れる。花王はチューブ内では分離していて、口に入ってから混ざって効果が表れるようにチューブを工夫した。

point1: 実験で確認した。         →実験は、人を対象にした疫学調査研究とは違う。
point2: 国際歯科研究学会で発表する。 →国際歯科研究学会(I.A.D.R.)は、歯科では一流の学会である。

<チェック結果>
ステップ1 
具体的な研究なので クリアー
ステップ2 具体的には書いていない。 ヒトの歯を使った試験管での実験かもしれない。→ 保留
ステップ3 学会発表である よってここで、終わり

*結論として話しネタ程度の記事だと分かる。

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